アグリファンド石川30周年記念誌「農育人」

林さんちの社長の私が、会長を務める通称「借金友の会」アグリファンド石川の30周年記念誌「農育人・農を育む人」が、発刊されました。構想2年でようやく完成に至りました。農の現場からの食育発信、そして石川の美味しい農家特集、新規就農を目指す方へ農家への道等々の盛りだくさんの内容です!私の巻頭言を載せます、、長文です、(o^-^o)

アグリファンド石川30周年への想い・『農を、育む、人たち』へ

アグリファンド石川(旧称「石川県総合資金友の会」)が生まれて満30歳になりました。これまでに、会員ならび各関係機関からいただいた、並々ならぬご厚情に感謝しています。今から30年前と申しますと、私の家では父親がタクシー運転手を辞め、総合資金を得て専業農家の道を歩み始めた年です。当時、高校に入学したばかりの私は、「農業で果たして食べて行けるのか?」と非常に不安だったのを覚えています。しかし、初代会長 故竹本平一様の農業経営に対する先進的な会の運営によって、曲りなりにも農業経営で生活をすることが出来ました。

既存の多くの農業組織で、アグリファンド石川ほど独特な組織はありません。補助金に頼るのではなく、制度融資を受けて、経営を積極的に行おうとする考えを30年前に展開したことは、同じ石川県で農業を営む者として尊敬するばかりです。20年前の10周年記念誌を読んでいますと、当時の先輩達の熱き思いが伝わって来ます。そしてその中の多くの経営体が私と同様、30年という時を経て、1代目、2代目、そして今は3代目の経営者が台頭して来たことが分かります。このことは、長期の制度融資という長いビジョンに立った経営を目指してきたアグリファンド石川の特徴を、よく表わしていると感じます。

そんなアグリファンド石川も、時代のトレンドには敏感で、10周年の時は大型化法人化IT化転作が話題になっていました。ちょうど機械化が進み始めた頃で、我が家を含め多くの会員が規模拡大を目指し、総合資金にお世話になっていました。規模拡大こそが、経営にとって最大の武器だったのです。20周年では、「売れる百姓」を目指し、本昌康前会長が、なんと20周年記念誌を本として全国販売すると提案。それまでの規模拡大だけではコスト削減にも限界が生じ、自らが価格をつけて自ら販売する能力が農業者に要求されて来たのです。20周年記念誌「味人めぐり」は、まさしく、そのことを象徴するような企画で、「モノを売る」というためには「自らを知らなくてはいけない」「自らを伝えなくてはいけない」と、会員には、それまでの農業者が身に付けて来た以上の能力を要求されたのではないでしょうか?

あれから10年経っても「味人めぐり」は、色あせることなく、今と比較しても、本の中に登場する会員の歳が少し若く見えるかなという程度の優れものでした。しかし、会員の経営の変化は大きく、自らが作った農作物を自らが販売する経営体が増えました。この「売れる百姓」に関する会員の能力向上に関しては、20周年を機に大きく前進したように感じます。そして、第18回の総会において、次回の30周年記念には何かを行うのか?それとも行わないのか?という質問が先輩会員よりあった際に、「30周年記念実行委員会を、会長命で招集して検討します」と答えたのは、よりアグリファンド石川が、今より前進するには、20周年同様良い機会であると考えたからです。

しかしながら、「一体何を?」と考えれば考えるほど、妙案が浮かびません。30周年記念のHP、DVDの編集。30周年を記念して全国の有名デパートで、会員の農産物フェアーを行う、等々のアイデアも出ましたが、どれも会員全般の参加が見込めないということで却下。しかし、方法論の討議の中でも、30周年記念の魂の部分を考えさせられる場面が多く出てきました。そして委員から、「会長自身は、今回の30周年で何をしたいの?」と問われて、迷わず「食育」と答えました。

「農業の現場からの食育発信」、これが私の考えたアグリファンド石川の30周年記念に向けたコンセプトでした。規模拡大→農産物直売→その次にくるトレンドは、間違いなく食育です。どんなに経営を良くしようにも、自らの農産物を食べてもらうにも、今の食の環境を変えねば限界が見えてきました。国産農産物、しかも、現時点では、圧倒的に輸入農産物と比べ価格的に高い商品を買ってもらう必然性を生活者に問うた時、果たして何%の方が国産農産物を選択するでしょうか?その時に、食の教育をなされた方だけが、選択の力を持っているのです。

アメリカ合衆国では、食育より企業の収益が優先されるあまり、食育がまったくなされず、国民が選択の力を持っていません。その結果、肥満、糖尿病と言った病気、しかも、若い世代へ万延しています。アメリカ合衆国が、日本の10年先を象徴しているとすれば、止めるなら今しかありません。幸いなことに、平成17年に世界初の食育基本法が日本で制定され、光明が見えてきました。そして、食の教育を受けた国民が、食材を選択する際に、我々、日本の農業者が作った農産物を選択してもらうことが、日本農業の生き残りのための最後の砦となると確信しています。

服部幸應先生の対談でも話されましたが、フランスのドゴール元大統領が、「食糧自給率100%でない国は独立国とは言えない」と提言。その後、各国が食糧自給率を上げる中、先進国で下げたのは日本です。自給率40%というのは、明らかに植民地化していると言わざるを得ないでしょう。身土不二、つまり地産地消が、地球環境、そして独立国としての国防の観点からもいかに大切なことであるかは、国民に食の教育をなさねば分からないことです。

「農業の現場からの食育発信」のコンセプトの元に、30周年の記念になるモノとして考えたのは、やはり20周年記念誌と同様の形態でした。やはり良いモノは、良い、その伝統をあえて崩さず、30周年も記念誌と決定し準備して来ました。そして、多くの方のおかげで、このたび発刊の運びとなりました。記念誌の名前は、「農育人・農を育む人」、サブタイトルに、「加賀金沢能登の農家がまじめに作った本」となっています。作る人から、売る人へ、そして、農を育む人へ、アグリファンド石川の会員の皆様の一層の進化を信じて、私の巻頭言とします。

アグリファンド石川  会長 林 浩陽
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